官と民が出会う場所で、「子どもたちのこれから」を語る時間
こまねりと練馬区とでタッグを組んで行う事業「ねりま協働ラボ」の始めの一歩、官民連携のトークセッション第6回目が開催されました。テーマは「居場所」。
全部で7回開催予定の官民が膝をつき合わせて語り合うこのトークセッションも最後となりました。(7回目は、ワークショップと形を変えての開催)今回も熱量高く、官民それぞれの居場所のあり方やこれからの繋がり方を語り合いました。
▼登壇者
● CASAワイワイ・小沼さん
● ねりまキッズボランティア・江口さん
● はっこう基地・髙岩さん
● 子育て支援課・Nさん
● 子育て支援課・Wさん
● 指導主事・Tさん
● ねりま若者サポートステーション・Oさん
● ファシリテーター/フリースペースそらいろのいえ・金さん
● ご意見番・こまねり/ちいさなおうち代表・長谷部さん
セッションの冒頭は、それぞれの登壇者から現在の活動と思いが語られました。
金さん(進行):かつては『フリースペースそらいろのいえ』という言い方にこだわっていましたが今は、『フリースペース』をつけなくてもいいかなぁと。行政サービスとしての居場所だけでなく、もっと柔軟な形があっていいと感じています。
高岩さん(はっこう基地):2025年5月より、中高生年代へ開かれた場づくりと居場所運営を中心に「何があっても、なくてもいられる」場の運営を目指しています。
江口さん(ねりキッズ):子どもの『やりたい』が起点。準備から運営まで子どもが主体で行い、『できた!』という経験を大人も若者も共有して元気をもらっています。
小沼さん(CASA):365日無休の居場所です。毎朝の挨拶と花壇の風景を大切にし、『笑顔・挨拶・うるおいに満ちた地域づくり』を目指しています。地域の違いを理解し協力し合う活動を続けています。
Tさん(指導主事):指導主事として、区立小中学校に対して、学習指導や生徒指導に関する指導・助言、学校経営上の支援、研修会等の企画・実施などを行っております。今年度、不登校対策担当として、、全小中学校に『校内別室』を設置しました。登校しても教室に入りづらい子のペースに合わせ、いかに学習を充実させるか試行錯誤しています。
Nさん(子育て支援課):学童クラブとひろば事業を運営、円滑に進めていけるように学校地域と調整、現場運営の支援をしています。放課後、子どもが遊びたい時にいつでも行ける安心安全な場所を目指しています。
Wさん:(子育て支援課):同じく学童クラブとひろば事業を運営しています。安心安全な居場所の運営、子どもが行きたいときに行ける場所、放課後の時間は遊びの時間、その時間は確保したいと思っています。
Oさん(ねりま若者サポートステーション):15歳〜49歳の方を対象に、就労支援事業と居場所事業を実施しています。社会に出るときにどういうことで悩んでいるのか等、相談にのりながら過ごしています。真面目ゆえに『失敗できない』と縛られている若者に寄り添い、農作業などを通じて社会との接点を作っています。
民間の悩み:資金、場所、そして行政との距離
小沼さん:自前の場所を持つと拠点があるという強みがある一方で維持する資金が必要になります。地域にいて学校との接点はあっても、行政との対話のチャンスを逃してきたかもしれないと感じています。
高岩さん:資金や人手は常に求めているが、それ以上に活動しているこの地域にもっと雑でゆるい空気があり、だからこそ生まれる繋がりを一緒に作り、楽しめる仲間が欲しいです。
行政の悩み:ニーズの多様さと評価のジレンマ
Nさん:ワイワイしたい子、静かに漫画を読みたい子、職員と話したい子。ニーズはバラバラなのに、職員は2〜3人。全員に応えきれない苦しさがあります。民間さんと繋がれたらどんなに嬉しいか。
Oさん:就労支援機関なので、就職が主な目的となってしまいます。でも若者と接していると『そこだけじゃないよな』と感じる。初めて友達ができて『青春のやり直し』ができた、という感覚こそが大事だと思っており、そこも評価してもらえたら良いなと思っています。
Tさん:学校でも「校内の居場所」として、今年から校内別室を始めています。
これまでは「学校に来たら勉強しなくてはならない」という考え方が強かったと思います。ですが、今は私たちから「勉強しなさい」とは言わないようにしています。
本人が望む学習をしたり、そこにいる支援員と相談して過ごし方を決めたりしています。疲れている子にとっては、ただそこにいられる居場所として存在することも大切です。
一方で保護者の中には、「学校に行っているのだから勉強させているんでしょう?」という視点を持つ方もいます。
また、教員免許を持つ先生は勉強を教える役割がありますが、支援員が勉強を教えることはできません。そのため、基本的には「見守り」という形を取っています。
学校という性質上、教室に行けなくても学びをどう保証するかという課題もあります。保護者の思い、学校の役割、子どもの状態などさまざまな視点があり、どうすればよりよくできるのかは難しいところだと感じています。
「場所」があるだけでは「居場所」にならない
セッション中、最も熱を帯びたのは**「居場所の本質」**についての議論でした。
長谷部さん:場所がなくても、居場所になり得るという事で江口さんの活動について、もう少し詳しく聞かせてください。
江口さん:子どもが「やりたいこと」を大人がサポートする形で活動しています。やりたいことだと、子どもたちは本当に熱心に取り組むんです。
例えば、普段は字を書くのが苦手な子でも、新聞記事を作るとなると一生懸命書きます。アイデアもたくさん出てきて、好きなことを通して活躍しています。
学校では「賛成してくれない」「協力してくれない」と感じて、自分の意見を言えないという子もいます。でも、みんなで一緒にやって「できた」という小さな経験が、その子にとって心の拠り所になっているのだと思います。
ここは、子どもたちが素の自分を出せる場所です。失敗も「失敗」ではなく、「チャレンジ」と捉えています。
金さん:私は、居場所とは「心がいられる場」だと思っています。場所があっても、心が安心して安定していられなければ、それは居場所とは言えません。だから「場所がある=居場所がある」と安心してしまうのは違うのではないかと感じています。
行政と民間の「ゆるやかな連携」に向けて
双方が求めていたのは、カッチリとした制度ではなく、「顔の見える関係」でした。
高岩さん: 子どもの頃って「鍵を忘れたら隣の家で親を待つ」みたいな環境があって、僕自身そういうゆるやかな繋がりの中で育ってきたんです。だから、行政と民間もそういう関係になれたらいいなと思っています。 例えば「はっこう基地」のイベントに来てもらったり、逆に僕が児童館や「若サポ」に行ったりして、お互いに顔の見える関係を作っていきたいですね。
金さん: そういうゆるい繋がりがあるってすごく良いですよね。 うちの団体は小学生の利用が多いので、中学生の息子にとっては高岩くんの「はっこう基地」の方が楽しいみたいで、そっちに遊びに行ったりしていますよ。
高岩さん: 居場所には、僕らが「待つ姿勢」でいることもすごく必要だと思っています。 ただ、その場所で待つだけじゃなくて、外でゴミ拾いをすることで近所の人から声をかけてもらったりして、「顔見知りになる」という繋がりづくりもやっています。
小沼さん:つながりをどう作るかという意味では、毎朝のあいさつがとても大事だと思っています。朝、保育園に向かう親子とあいさつをしていると、その流れでCASAに立ち寄ってくれることもあり、そういう日常の交流が入り口になります。
あいさつが苦手な子もいるので、嫌にならないように声をかけ続けていると、ある日ふっと笑ってくれたり、気づいたら後ろに立って肩を揉んでくれたりする。そういう積み重ねで、ここが自分の居場所になっていくのだと思います。
CASAには目的の違う8つの部屋をつくっています。スタッフも地元の同級生や、ここに来ていた保護者など顔見知りが中心です。
ただ、運営としては1日8人くらいがちょうどいい規模ですが、授業時間の短い水曜日などは30人ほど来てくれることもあります。それぞれの場所にはキャパシティがあるので、地域でうまくつながりながら受け止めていく必要があると感じています。
江口さん: 私は、定期的に児童館のネットワーク会議や地域包括支援センターの地域ケア会議に参加しています。そこには子育て支援の人だけでなく、PTA、行政、老人ホームの方、薬局のおじさんなど、本当にいろんな人が来るんです。 行政の上の方で繋がるのももちろん大事ですが、こういう会議でよく分からなくてもとりあえず知り合って、お互いの要望を伝え合うような「草の根の繋がり」がすごく大切だと思っています。「児童館はあるけど合わない」という子もいるからこそ、いろんな大人が繋がっているといいですよね。
Tさん: 私(指導主事)は、学校から見るとどうしても「上」の立場と従えられますだからこそ、教育委員会から「ここを正式に認定したから繋がって!」となると学校側は押し付けられているように感じて嫌がるんじゃないかな、と思うんです。 急に押し付けられても現場は困ってしまうことがあるので、むしろ個別に校長先生たちと繋がっていく方がスムーズなのではないかと感じています。
金さん: 私たちは活動をスタートしたばかりなので、じわりじわりと学校に近づいていきたいです。例えば「校内別室」のミーティングに、地域の人間を少し呼んでもらうなど。 学校の別室でどんなことが行われているか分かれば、「学校ではこうだから、うちの不登校の受け入れはこうしていこう」と連携できますよね。お互いのいいところを共有して、子どもたちにとってより良い活動にしたいんです。児童館のネットワーク会議など、校長先生も参加する場でそういうお話をするチャンスを作ることは可能でしょうか?
Tさん: それはぜひ、直接聞いてみていただくのが良いと思います。 区としては予算を出して「別室を開いてください」と方針を示していますが、実は「支援員が見つからない」「来る子がいない」など、学校によって事情が全然違うんです。学習メインのところもあれば、居場所重視のところもあって、実態に合わせて運営されているので一律には絞り切れません。 だからこそ、「そちらの学校の別室はどうなっていますか?」と直接聞いてみてください。「うちはこうやってるんだよ」と教えてもらえると思いますし、そういう聞き方をしていただくのがとても良いアプローチだと思います。
金さん:最後に今回のトークセッションを通しての感想と今後についての展望などを順番にお願いします。
Tさん: 実は、団体の皆さんと今日このようなお話ができるとは思っていませんでした。今この場に座って、どういう方向性で進めるのがベストなのか、正直まだはっきりとは見えていません。 学校現場の「働き方改革」という課題もありますが、一方で、支援を必要としている不登校の子どもたちがたくさんいるのも事実です。「これ以上、どう支えていけばいいのか」という問いに対し、皆さんと連携しながらやっていきたいという強い思いがあります。現場の繋がりを上手く活かしながら、模索していけたらいいなと感じました。正解は、まだわからないけれど、共に歩み寄っていけたら良いなぁと思っています。
Wさん: 今回のお話をいただいて、「居場所って一体何だろう?」と改めて考えました。私にとっては、「自分がそこにいたいと思える」「自分で選択して来ている」「ここにいていいと思える」、そんな場所が良い居場所なのかなと思っています。 保育園や学校、学童などは、どうしても「いなくてはいけない場所」になりがちですが、そこをどうやって「いたい場所」に変えていくか。ここは私たちが皆さんの力を借りながら頑張らなきゃいけないところです。 子どもたちの姿を見ていると、時々「行かせる場所」を親が決めてしまっていないかな、と感じることがあります。本来、居場所は子ども自身が決めてほしい。 そのためには、私たち大人がどれだけ多くの選択肢を持っているかが重要です。「こんなところもあるよ」と、子どもに豊かな選択肢を提案できる大人でありたい。 そんな未来を、これから皆さんと一緒に作っていけたら嬉しいです。
Nさん: 児童館や学童で子どもたちの「ほっとしている顔」を見たり、親御さんから「ここがあるから頑張れます」と言ってもらえるのが、何より嬉しいんです。 私はこれまでルールに縛られて生きてきたので、今、自分で選択できる自由な仕事がすごく楽しい。私自身も笑顔でいられるし、子どもや親御さんに「自分の居場所」を作ってもらっている感覚です。居場所は一つじゃなくていい。選択肢がいっぱい増えていけば、人生はもっと豊かになる。私たちが元気につながることで、また新しい楽しい場所が生まれると思っています。
Oさん: 今の若者の「警戒心の強さ」を感じています。以前、就労支援の窓口と居場所(若サポ)が隣り合っているのに、全く繋がりがない時期がありました。 そこで、就労相談に来た子がパソコン教室に参加するついでに居場所にも立ち寄れるよう、お互いの「壁」を薄くしてみたんです。最初は小さなきっかけでしたが、少しずつ繋がれるようになりました。こういう「じわりじわりと広がる仕組み」が大切なんだなと実感しています。
小沼さん: 最近「無敵の人」という言葉がありますが、背景にあるのは社会的な孤立です。これを防げるのは、挨拶であり「地域の力」なんですね。 練馬には30〜40代の「ねりパパ」という団体がありますが、私は「ねりジジ」を作りたい(笑)。退職して、お金も経験もあるおじいさんたちが、地域でニコニコ挨拶して子どもと楽しそうに関わる。そんな事例になりたいんです。 私の理想は「実家 + コインランドリー」のような場所。 実家のような安心感があり、かつコインランドリーのように「いつ行ってもリフレッシュして綺麗になれる」、そんな場所を24時間365日に近づける勢いで、じいさんも頑張ります。
江口さん: 最近はボランティアが多くて、子ども11人に対しボランティア13人という贅沢な環境になることもあります。 知的障害のある20代の青年が、ここで「おやつ係」として子どもたちに喜ばれた経験から、「ここがあるから仕事も頑張れる」と言ってくれたり、孤独を感じていた大学生が「ここは温かい」と涙したり。たった4時間でも、場所があることで人の心は変わるんです。子どもも大人も若者も、みんなが関わり合って育ち合える場所として、行政とも連携しながら進んでいきたいです。
高岩さん: 孤独や孤立はとても複雑な問題です。でも、たとえ貧困などの困難があっても、そこに「繋がり」さえあれば救われることがある。 だからこそ、僕らは「ごちゃまぜ」でありたい。中高生年代、一般の方も混ざって、ゆるく、時には雑でもいいから、支え合うことの意味を大事にしていきたいです。
金さん: 今の子たちはバーチャルの世界があるから、居場所がなくても生きてはいけるし、私たちの知らないことをたくさん知っています。 でも、リアルな居場所を持つ私たちとしては、やっぱり「居場所っていいな」「生身の繋がりっていいな」と思ってもらえるように、これからも皆さんと繋がっていきたいです。
トークセッションの最後を飾ったテーマ「居場所」。特に子ども達の居場所というとどうしても場所としての「居場所」があるかないかの話しになりがちです。ご意見番の長谷部さんもツッコミを入れていたように、場所を持っていなくても心の拠り所としての居場所になれる活動もあるという事もずっしりと伝わりました。また365日開いているという行政では到底、難しい地域の居場所が練馬にあるというのも驚きと共に凄い!と純粋に感動しました。
行政側の様々な思いや工夫や苦悩が聞けた事もとても有意義でした。今後、どうしたら上手く一緒に連携していけるのだろう?と改めて双方で考えていけたらと思いました。
レポートの最終回は、行政と民間が一緒に開催したワークショップ。 最後に相応しい、とても楽しい場となりました。お楽しみに♪
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