【トークセッションレポート⑤】テーマ「子育て支援」2025年11月27日 @練馬区本庁舎20階 交流会場にて

官と民が出会う場所で、「子どもたちのこれから」を語る時間

こまねりと練馬区とでタッグを組んで行う事業「ねりま協働ラボ」の始めの一歩、官民連携のトークセッション第五回目が開催されました。テーマは「子育て支援」。

▼登壇者

回を重ねるごとに場の雰囲気も熟成されていき、運営側のこまねりスタッフと協働推進課の皆さんとのコミュニケーションもどんどん深まっています。今回の子育て支援では、練馬区の民間子育て支援団体として中心的存在の四名と行政側から校長先生、保育園園長、子ども家庭支援センターの職員の方と日々子どもと直接関わっているメンバーの登壇でした。

最初にそれぞれの立場や活動を少し長めに自己紹介しながら、日常的に子育て支援に関わる中で感じている思いや課題について語ってもらいました。


芥川さん(ねりパパ代表/ファシリテーター)練馬区近隣で活動するパパの団体「ねりパパ」のメンバーとして、15年にわたり活動を続けています。児童館での読み聞かせやバルーンアートをきっかけに、行政と連携した両親学級や、パパ目線での子育て講座などにも取り組んできました。近年は、育児休暇を取得するパパが増える中で、家事や育児への関わり方に悩む父親同士が気軽に話せる座談会を光が丘で開催しています。答えを出す場ではなく、「うちだけじゃなかった」と安心できる場づくりを大切にしており、パパたちの新たなニーズを実感していると感じます。今回のトークセッションでは、子ども本人ではなく保護者支援に焦点を当て、官民での情報共有と次のアクションにつなげたいと思います。

N先生(練馬区内校長)練馬区で生まれ育ち、約30年にわたり区内の学校現場に携わってきました。現在も光が丘地域にある小学校長として勤務しています。練馬区には小学校65校をはじめ、多くの教育機関があり、学校と子育ては切り離せない関係にあるといえます。区内すべての学校を代表する立場ではないとしつつも、学校現場から見える子育ての現状や、地域との関わりについて、率直に話せることを共有したいと思います。

Y園長(練馬区保育園 園長)今回の参加を通して、こまねりや地域団体の多様な活動を改めて知り、子どもを取り巻く環境が想像以上に広がっていることに驚きました。自身の無知さにも触れながら、保育の現場だけでは見えにくい地域の支援や取り組みをもっと知りたいという思いで、この場を楽しみにしてきました。子どもや保護者を支えるために、園の外にある資源や人とのつながりを学び合う姿勢を大切にしています。

Nさん(子ども家庭支援センター職員)子ども家庭支援センターの役割について話したいと思います。支援センターは虐待通報の窓口として知られがちですが、それだけでなく、子どもの発達や子育ての悩み、家庭の困りごとなど、幅広い相談に応じる機関です。専門職が多角的に支援を行い、特に保護者の気持ちに寄り添うことを大切にしています。また、児童虐待の予防・早期発見に加え、地域の関係機関と連携しながら支援ネットワークを築いています。今回のような対話の場を、地域連携の一つとして大切にしたいと思います。

村嶋さん(こねくとうぃず代表)「練馬から日本のママを元気に」を掲げ、子育て中の保護者や支援者を対象にコミュニケーションを学ぶ場「こねくとうぃず」を運営しています。「必要な人に、必要な情報を確実に届ける」ことを大切にし、教育委員会委託講座などを通じて大規模な広報と講座運営を行ってきました。活動7年目を迎える中で、行政連携の可能性と同時に、継続の難しさも感じています。自身の経験も含め、子育て支援は家庭内の課題と深く結びついており、行政・学校・地域団体との更なる連携が重要だと感じています。

くぼさん(こねくとうぃず講師)三人の子どもを育てる母として、また講師として活動しています。産後うつや夫婦関係の悩み、不登校、発達障害など、さまざまな経験を通して、保護者の「困りごと」を少しでも軽くしたいという思いから活動を続けてきました。講座では、できていない部分ではなく「できているところ」に目を向ける視点を大切にし、オリジナルの小道具を使いながら、心がふっと軽くなるきっかけを届けています。今日の場でも、互いの「丸(できていること)」に気づき合い、味方を増やす時間にしたいと思っています。

鈴木さん(ねりま子育てネットワーク)子育てを孤独にしない環境づくりを目指す「ねりま子育てネットワーク(ねりこそ)」の活動を紹介します。ねりこそは、20年にわたり、支援者・当事者・行政が顔の見える関係でつながることを大切にしています。子育て情報ポータルサイトの運営や、子ども用品のリユースカフェ、区主催イベントへの参画など、地域に根ざした取り組みを続けてきました。ゆっくり話せる場の中で生まれる何気ない会話こそが、子育て支援の土台になると考え、現役ママとしての視点を大切に活動しています。


自己紹介の後は、ファシリテーターの芥川さんの進行で子育て支援の中でも保護者への支援を中心に普段、保護者の方から聞く、相談や困りごとをそれぞれに語っていただく流れになりました。

ねりこその鈴木さんが、以下のように語りました。

「人の数だけある」保護者の困りごと

鈴木:核家族化が進み、親以外の人から学ぶ機会が減ったことで、保護者にかかるプレッシャーも大きくなっています。 保護者の悩みは、経験したことのないことや先の見えないことへの不安、出産や就学などライフステージが変わる時期に特に大きくなりがちで、家庭だけで解決しようとすると苦しくなってしまうのではないかと感じます。困ったときに「助けて」と言える人や場所が身近にあるかどうかで、悩みの大きさは変わるのではないかと思います。 一方で、今のお母さんたちはスマートフォンやSNSで簡単に情報を得られるものの、つながった気になっているだけで根本的な解決には至っていないことも多く、身近な人とつながることや、地域でつながることの意味が分かりにくくなっていること自体が、今の課題だと思います。

こねくとうぃずの村嶋さんとくぼさんも続けます。

村嶋:保護者の困りごとは「人の数だけある」と感じており、その内容は非常に幅広いです。不登校一つを取っても、登校日数が減り始めた段階での不安や葛藤、長期間の不登校による途方に暮れる状況、学校以外の居場所を見つけて落ち着いて過ごせているケースなど、状況はさまざまであると感じています。
また、学校に行けているかどうかだけでなく、夫婦やパートナーが同じ方向を向いているか、負担が一人に偏っていないか、仕事や経済面の問題など、家庭全体の状況が深く関わっていると考えています。不登校以外にも、乳幼児期の孤独感やきょうだい関係、デジタル機器との付き合い方、家庭や親自身の問題など、複合的な悩みを抱えている保護者が多いと感じています。

くぼ:保護者が本音の気持ちを「絞り出すように」語ってくれる場面に何度も対峙してきました。例えば、「下の子が生まれてから上の子をかわいいと思えなくなった」といった、親として口にしてはいけないと思い込んでいた感情を、ようやく言葉にできたことで、心が軽くなり癒やされていく姿を見てきました。親になることは常に初めての連続であり、「親だけれど怖い」「分からない」「つらい」と感じるのは自然なことだと感じています。

二人は、活動を通じて、子育ての中で生まれる不安や焦り、孤独感を安心して話せる場が限られていることを実感しており、その大切さを場づくりの中で強く感じていると語っていました。

行政・保育・学校が語る「オーダーメイド型」の保護者支援

また、行政側でも以下のような話しが出ました。キーワードは「オーダーメイド」。

Nさん:保護者の困りごとは単一の原因ではなく、複数の要因が複雑に絡み合って生じています。困り感が大きくなるほど、支援サービスを探したり手続きを行ったりすること自体が負担になってしまう現実があります。そのため、制度やサービスを紹介するだけでなく、手続きの段階から一緒に取り組む伴走型の支援が重要であると考えています。子どもだけでなく、保護者や祖父母との関係など、家族全体の状況が影響し合っている点も見過ごせません。

Y園長:子育ての悩みは子どもの年齢や家庭環境によって異なり、特に初めての経験や見通しを持ちにくいことに不安を感じる保護者が多い。保育の現場では、正解を一方的に伝えるのではなく、まず「何に困っているのか」を丁寧に聞く姿勢を大切にしています。0歳児の食事など、些細に見えることでも保護者にとっては重大な悩みであり、各家庭の状況に合わせたオーダーメイドの助言が必要だと感じています。また、保護者の生活背景を理解し、価値観を柔軟に更新しながら支援していくことが重要だと思っています。

最後にN先生が学校自体が保護者の子育ての悩みの一つになっている現状について触れながら、とても心に残る話をしてくれました。

「ねばならない」が親子を苦しめる

N先生:「ねばならない」という意識が、子どもや保護者を苦しめている場面が多いと感じています。先生方に私はよく言うのは、よさっていう部分で見ようねと。漢字じゃなくてひらがなで言っているんですけども「よさ」というのは誰かと比べて秀でているものではなくてひとりひとりが持ってるさまざまな物の良さとして認めて行こうよと。短所を無理に直すのではなく、長所を伸ばすことで全体を支える教育の考え方を大切にしています。不登校や集団不適応の背景は非常に複雑であり、学校だけで対応するのは難しいため、スクールカウンセラーや地域の支援団体と連携して支援を行う必要があると思います。今回のような場を通して、学校と地域がつながることで保護者の方の一助になれたらと思っています。

次に芥川さんは、現在の様々な分断について、問いかけました。

家庭・学校・地域の分断と、つながり直しの必要性

芥川:共働きの増加などにより家庭内や夫婦、学校と保護者の間で分断が進み、コミュニケーションが減っているのではないでしょうか?PTAがない学校が最近増えつつあり、保護者の学校との繋がりが希薄になっているように感じています。子育てする上で学校との連携は重要であり、学校と保護者をつなぐ新たなかたち作りが必要だと感じています。この点に関して現在どう関わっていますか、また今後どのように関わっていけると思いますか?

くぼさん:一保護者として、担任の先生と直接話す機会が近年大きく減っていると感じています。挨拶程度で一年が終わり、特に自分から動かないと信頼関係を築けないまま次の学年に進んでしまうことに寂しさを感じています。先生の働き方改革の重要性は理解しつつも、人と人がつながることの難しさを実感しています。

N先生:保護者と教職員のつながりが希薄になっていることを課題として認識しています。そのため、学級通信やICTを活用した情報発信を通じて、日常的に学校の様子を伝える工夫を重ねています。一方で、働き方改革による時間的制約や連絡手段の制限もあり、思いが十分に伝わらない難しさを感じつつ、保護者が学校に足を運ぶ機会を意識的に設けるなど、関係づくりに取り組んでいます。

Y園長は、保育園での保護者との関係性を語ってくれました。

Y園長:保育園では、子どもだけでなく保護者との関わりを大切にしています。多くの家庭は子どもを大切にしていますが、困りごとを自ら発信する保護者は少なく、こちらから声をかけないと見えてこないことも増えています。そのため、送迎時には「元気です」だけで終わらせず、子どもの具体的な様子を伝えるよう心がけています。個人面談や保育参観、連絡帳を通じて家庭の状況を把握し、必要に応じてさりげない形で保護者へのサポートを行っています。

芥川さんは、コミュニケーション不足を背景とした子育ての難しさについて、複合的に大変さを抱える家庭に対して、民間としてどのような支援ができるのか、また「あったらありがたい支援」について意見を求めました。

民間だからできる支援と「居場所」の役割

Nさん:家庭や学校で居心地の悪さを感じる子どもが、安心して過ごせる「居場所」の存在がとても重要だと思います。そうした場所は子どもに安心を与えるだけでなく、学校に行けない時間の過ごし方に悩む保護者の支えにもなると感じています。また、子どもが行きたくない場所がある場合でも、別の選択肢があることが大切だと考えています。さらに、年齢の低い子どもや、人が多い場所に不安を感じる親子が、安心して利用できる小規模で落ち着いた場も必要だと感じています。

鈴木さん:保育園では送迎を通じて保護者と先生が日常的に関わる一方、小学校になると保護者が学校に足を運ぶ機会が急激に減ります。相談したくても学校の相談窓口は予約が取れず、悩みが大きくなってしまう保護者が多くいます。一方で民間には多くの支援先や居場所があるにもかかわらず、必要な人にすぐつなげられない現状があると感じています。行政や相談窓口と民間団体が連携し、相談の段階で適切な民間の場につなげる仕組みが必要だと思います。

村嶋さん:忙しい子育て世代は生活圏が限られ、地域に多くある民間の活動や居場所を知る機会が少ないと感じています。行政が支援する「困ってから」の手前に、困りそうな人がつながれる場が必要だと考え、活動を続けています。また、保護者は子どものために時間を使う方が多いので、お子さんに関わる企画を立てつつ、保護者自身が元気になれる場にもなるよう心がけています。

芥川さんも練馬区内に約70もの団体があるにもかかわらず、その情報が十分に届いておらず、活かしきれていないことを大きな課題だと指摘しました。情報の届け方や受け取られ方に課題がある中で、こうした資源をつなぎ直し、活用していくことが、今後の「こまねり」の重要な使命・役割になると話しました。

最後に本日のそれぞれの感想を語っていただきました。

対話を続けることが、これからの子育て支援を前に進める

芥川さん:親世代が抱く「理想の母親像」や他家庭との比較が、保護者自身を追い込み、家庭内の負担や摩擦を生んでいるのではないかと感じています。比較ではなく参考にとどめることで、気持ちが楽になるのではないかと思います。

N先生:地域や家庭内での孤立、とりわけ外国籍家庭の増加により、言語や文化の壁を抱えた保護者の子育ての悩みが深刻化している現状があります。学校としても地域や民間団体と連携し、悩みを拾い上げる役割を果たしていきたいと思います。地域もそうですし保護者の悩みを繋いでいくような架け橋の役目を意識してやっていかなければいけないと考えています。

Y園長:地域の子育て世代の方の力になりたいなあっていうのを考えているところです。地域の子育て世代のニーズを十分に把握しきれていない課題を感じつつ、保育園の専門性を生かし、民間団体の活動を保護者につなげていく可能性を見出しました。

Nさん:私たちの仕事ってまずは学校や保育園のように子どもたちが日中過ごしている場所の方たちと親密な関係を作らせていただいてお互いに信頼関係を作っていかないととても成り立たない。行政の立場として、子どもの安全確認を入口にしながら、保護者の困りごとに寄り添う支援を行っていくこと、そして学校・保育園・民間団体との信頼関係と連携が不可欠だなぁと感じました。どういった民間の団体さんだということを知った上で関わりを持たせていただけると非常にうれしいというふうに思っています。

村嶋さん:保護者向けの支援活動が学校や行政に十分認知されていない現状や、PTA縮小によるつながりの減少を課題として感じました。学校や企業とも連携しながら、会社を支える現役世代や保護者でもある先生方とも繋がっていきたいです。

くぼさん:親や先生が「あるべき姿」という重さを抱えながら頑張っている現実に触れ、大人が「ありのままでいること」が子ども達の心を自由にしていくには、必要だと思いました。ドアを開け続けること、講座をやり続けることがすごく大事なんだなぁと支援の場を開き続ける意義を再確認しました。

鈴木さん:行政・民間それぞれの悩みや想いを共有できたこと自体が、今後の子育て支援を前進させる大きな力になると思いました。こうした対話の場を今後も継続していく重要性を感じました。



今回のトークセッションでは、子育ての悩みが家庭内だけで完結するものではなく、学校・行政・民間団体が重なり合って支える必要があることが改めて共有されました。

一人ひとり異なる困りごとに寄り添う「オーダーメイドの支援」と、安心して本音を話せる場づくりの重要性が、官民双方の立場から浮き彫りになりました。

立場を越えて語り合うこの対話の積み重ねが、練馬の子育て支援を次の一歩へ進める力になると感じる時間でした。

次回は、1月30日(金)このトークセッションもこれで一旦終了となります。最後は、これまでのトークセッションとは、一歩進み、ワークショップ形式で開催します。「子どもの未来」をテーマにグループワークを行います。「私も話したかった!」という団体の皆様、奮ってご参加くださいね♪

トークセッションのレポも第6回、第7回と随時アップしていきます。